いたみは、1979年、国際疼痛学会(IASP)において、痛みを感覚としてだけでなく、情動としてもとらえなければならないと定義されました。

注釈
侵害刺激によって誘発される侵害受容器や侵害受容経路の活動が痛みなのではなく、痛みは常に心理的なものである、としており、痛みを刺激と関連付けることを避けています。
特に、慢性痛では、局所の痛みの評価のみでなく、生物学的、心理的、社会的な要因を考慮した、生物心理社会モデルに基づいた総合評価と対処が必要としています。

急性疼痛と慢性疼痛

急性疼痛

急性の痛みは生体に生じた異常を知らせる警告信号として作用します。

慢性疼痛

慢性痛は痛みの原因となる外傷や疾患が治癒した後にも長期間持続し,有害な痛みとして捉えることができます。

治療の考え方

痛みの伝達メカニズム

急性疼痛

NSAIDs(消炎鎮痛剤)の投与。いわゆる痛み止めですが、痛み止めは痛みをとる目的で投与されていません。内服することで局所の炎症(傷)が治ることで痛みが取れる仕組みです。詳しくはNSAIDsが局所で産生されるプロスタグランジンEの産生を抑えて炎症を改善します。ですから痛み止めは痛みをとるためではありませんので、痛いときのみ飲んでいたのでは目的が達成されません。

慢性疼痛

局所の炎症が改善しているにも関わらず、痛みが残存している。いうなれば痛みとしての感覚は同じだが、危険信号ではなくなった感覚とでも言いましょうか。ですからNSAIDsは効果薄です。
慢性痛では脊髄後角での伝達メカニズムに注目されています。

~痛みは脊髄後角で記憶する~

記憶を忘れさせることで痛みを解消する。脊髄後角に作用する薬はデュロキセチン、プレガバリン、トラマドール等があります。

平成30年3月発刊されました

痛み、特に慢性疼痛は、薬物療法ですべて解決することは難しく、認知行動療法等総合的な観点からの治療を要することがあります。
全国に23か所専門機関がありますので連携治療が必要な場合には紹介しています。